結城はひと言訊ねた。

黒田には「雨が小降りになるまでいてほしい」と、言っているように聞こえる。

窓を打つ雨が激しさを増し、結城は部屋の明かりを灯す。

稲光が走るたび、黒田が目を閉じる。

「雷が恐い?」

「恐くなんか……」

言い掛けた黒田の声を遮るように、落雷の音が耳をつん裂く。

黒田は咄嗟に、結城の腕にしがみつき胸に体を預ける。

結城は凭れかかる衝撃に「あっ」と声を上げ、黒田の体を受け止める。

「素直じゃないな」とポツリ。

慌てて離れる黒田を結城は、ギュッと抱き寄せる。

「あの日――こんな風に俺が抱き寄せていたら、そんな怪我はしなかったのに」

――由樹……

抱き寄せられた驚きと結城の言葉。

黒田の言葉は声にならない。

「たった1歩動けば、その足は傷つかなかったのに」

結城の手から伝わる熱。