「わかっているわよ」

黒田は結城を真っ直ぐに見つめる。

「麻生は……倒れたの知ってる?」

「話していないわ……貴方、あの子にどこまて話しているの?」

「麻生には相田さんが話したらしいから、俺から話す必要ないでしょ!? 大きな発作なんて度々ないし、あったにしても知っているからって、何にもできないんだから」

「相変わらずね、貴方が初めて電車の中で倒れた時は大変だったのよ」

「悪かったよ。黒田さんって最初、恐くて話せなかったんだ」

「今では貴方の方が恐れられているわよ」

「黒田さん……」

「何?」

「事故の後……外回り辞めたのは、俺を立ち直らせるため?」

結城が真顔で訊ねる。

「俺、あの事故の後……声が出せなくなって、1年近くまともに喋れなかった」

「そうだったわね」