渡部は「よく無事だったな」と言いつつ、険しい表情を作る。

「襲ってきた奴は盗聴などと、やはり関係があるだろうな。しかし、次から次に……」

「また何か?」

「まあな。由樹ほど、真面目で誠実な仕事をしてる奴はいないと思うがな」

「何があったんですか?」

「由樹が沢山江梨子のゴーストライターだと吹聴してる奴がいるそうだ」

「あり得ない。だって、結城さんは沢山江梨子先生の作品も、先生自身も嫌いなんですよ」

「だよな」

「どうして結城さんばっかり……あんなに頑張ってるのに」

紗世が泣き出しそうな顔をする。

「麻生、何があったとしても由樹を信じてやってくれ」

「もちろんです」

「ん、彼奴が無理をしないように……任せたぞ」

渡部の柔らかな優しい顔に、紗世はコクリ頷く。