「わかりましたよ~」

結城はむくれた顔のまま、出かける準備を始める。

紗世は結城の側で、結城が鞄の中に筆記用具、ノートパソコンなど確認しながら入れていくのを観察している。

「あっ、麻生」

結城は紗世の顔を見るなり、机の引出しからB5サイズのルーズリーフ型ノートを取り出す。

「これ、マニュアルな。大概のことは、それに解りやすく書いてある。
後は、自分で見やすいように工夫して書き込みするなり、線引くなりシール貼っつけるなりしろ。
解らないことは、後伸ばしにするな。
小さなことでも、バカみたいな質問でも、しつこくても、面倒でも、ちゃんと答えてやる」

真剣な眼差しが、紗世を射抜くように見つめている。

「返事は?」

「……はい」

「返事が小さい」

「はい!!」

「ん、よろしい。麻生、来るか? 沢山江梨子の所」

「いいの……いいんですか?」