贖罪を抱えて、今なお癒されることのない互いの心。

紗世は結城が、陰で黒田を「お局様」と呼びながら、一服の信頼と尊敬と感謝を内にして慕っているのだと感じる。

1つ間違えば、身を裂くナイフのような関係だと思う。

魂を引き裂かれるほど、結城は悩んだに違いないと……。

そして今なお、結城は目の前の元上司を守れなかった瞬間を思い出し、苦しんでいるのだと……。

――結城さん、哀しいよ

紗世は思い切り、叫びたくなる。

「由樹は1から10まで教えるタイプではないわよ。いくらマニュアルが完璧でも、それを活かすのは貴女自身なのよ」

「黒田さん……」

「相手はロボットではないの、人なのよ」

紗世の胸が、黒田の言葉で熱くなっていく。

「考えなさい。万萬詩悠の心を開く方法を。貴女のやり方で万萬詩悠の心を開きなさい」