――黒田さんが無理をし、ヒールを履くのは、結城さんへの気遣いだろうか

紗世は思う。

結城がヒールの高さの違いに気付いていることを知らないだろう、黒田の誤算。

紗世は結城と黒田、双方のすれ違う気遣いが哀しいと思う。

――でも……

紗世はそこまでお互いを気遣い思いやっている、結城と黒田の絆も感じる。

ただの元上司と元部下ではない特別な……と。

――俺はただ可愛い、綺麗な女より理系女が好きです

紗世は、あれは結城の本心に違いないと思う。

――結城さんは黒田さんが好きなんだ

紗世はそんな風にも思う。

異動初日、黒田が結城に「貴方、私に1度も頭を下げたことがなかった」そう言っていたのを思い出す。

上司を守れずに怪我をさせ、一生癒えない傷を負わせた負い目。

元部下の後悔と負い目を感じ、じっと見守る元上司。