連日、雨続き。
空の色は灰色をしている。

紗世は万萬詩悠の小説をどうにか、1作読み終えた。
――この小説を……あの万萬くんが書いたなんて


紗世は万萬の、群青新人賞受賞作品「限りなくグレーに近い空」を読んだ時以上の衝撃を覚えた。

「この作家を……あの沢山江梨子にぶつけるの?」

紗世が万萬の原稿を手に、思わず溢した言葉を編集長は聞き逃さない。

「どうだね、麻生くん? 万萬詩悠は群青受賞作より、パワーアップしているだろう?」

「……はい、凄いです」

「万萬詩悠、『空と君との間には』が楽しみだ」


「あの編集長、わたし……万萬くんに嫌われてるんでしょうか」

紗世は渡部に泣きそうな顔を向ける。

「ん……どうした?」

「万萬くん、結城さん経由でしか連絡して来ないんです……それに会っても要件しか」