「結城さん! もう話さなくていい」

「黒田さんが入院中、新人が編集部に」

「結城さん、止めて……もう話さなくていいから」

紗世の目が涙で滲み、思い切り声を震わせ叫ぶ。

カーステレオの音量を上げ、結城の話を遮る。

「俺は……あの時、黒田さんを守れなかっただけじゃない……その後も」

「話さなくていいよ、そんな辛そうな結城さん……わたし見たくない」

交差点。
車を止め信号待ちする結城の強張った顔は、真っ青で……。

紗世は思わず結城の腕を握る。

「わたしは大丈夫。結城さんが倒れたら、担いででも走るから。結城さんが誰かに苛められてたら、相手を投げ飛ばして、結城さんを守れるから」

紗世は零れそうな涙を堪え、明るく笑って見せる。

「65Aカップのボディーガード、ちゃんと務めて見せるから」

青信号を確認し、結城は車を走らせながら「バカ」小さく呟く。