「き、昨日の今日なのはわかりますけど、何も其処まで……」

「あなたは、あの女が由樹に何をしたか知らないから!」

「何をされたんですか?」

黒田が紗世の暢気な質問に、顔を強張らせ、紗世を睨む。

「……余計なことは話さなくていいから」

突っ伏したまま、結城は顔だけ黒田に向ける。

結城の目は凍てついたように冷たい。

「その手の傷は、あの女のせいで……」

「話すなと言ってるだろ!!」

結城の張り上げた声に黒田がびくつく。

驚きよりも畏怖の表情で、顔を歪める。

結城が胸をギュッと服の上から、両手で押さえ喘ぐように息をつく。

「……すみません、まだ消化しきれていないので……勘弁してください」

ポツリ呟いた結城の憂いを帯びた、寂しそうで悲しい顔。

紗世は綺麗だと思う。