「ゆ、結城さん?」

「派手な香水の匂いで危うく……侵されるところだった……」

「由樹、落ち着きなさい」

いつになく冷静さを失っている結城。

紗世は唖然とを通り越し、震え上がっている。

「沢山江梨子の方が迫ってこないだけマシだ……香水禁止令を出すべきだ」

結城の息遣いがかなり乱れている。

「穏やかじゃないな」

「……寿命が……縮んだ……」

結城はガクリ机に突っ伏す。

「しっかりしなさい」

黒田が結城の側に寄り添い、結城の背を擦る。

「ったく、何されたのよ?」

「……思い出したくない」

黒田は結城の1言で、それ以上は何も言わない。


「浅田さんですか?」

紗世が訊ねた途端、黒田が結城の耳を両手で塞ぐ。

「麻生さん!バカなの?」

黒田の剣幕に紗世はたじろぎ数歩、後退りする。