「そうなんですか?」

「彼女の件で由樹はかなり内外に、敵を作っているようだ」

紗世は自分が結城のことを、ほとんど何も知らないことを思い知らされる。

「浅田くんは管理職にも受けがいいし、顔も広いからね」

紗世は昨晩の襲撃を黙っていていいのか?と考える。

――結城さんは話すなと言ったけど、次は昨晩のように、交わせないかもしれない。
もし、結城さんを盾にされたら……

紗世は不安でたまらなくなる。

「あの編集長……」

紗世が思いきって編集長に話そうと、息を吸い込む。

「あの昨晩……」

言いかけた刹那、扉が激しく開いた。

「クソッ、あの女。何様のつもりだ!」

結城が憤慨甚だしく席につく。

「由樹!?」

「壁ドンして擦り寄ってくるなんて……何考えてるんだ?」