「あ、麻生……そこまで言わなくても」

黒田の険しい視線が紗世に向けられている。

万萬はボールペンを握りしめ、紗世を唖然と見つめている。

「だって、ひどいんですよ~『俺はバカより理系女が好きです』とか『Aカップの幼児体型に興味ない』とか」

――すみません。
もういいです。彼のイメージが壊れるのでやめてください

「とても由樹には聞かせられないな」

「そうね。由樹が居なくてよかったわ」

万萬がサラサラとボールペンを走らせる。
不毛な会話を無視するように。

――あの『空と君との間には』書き始めていいですか?

「いいだろう、始めてくれ。連絡先、聞いておこうか」

――メールアドレスでいいですか? 電話だと話せないので

「ああ、連絡さえつけば」

――スマホ貸してください。打ち込みます