紗世は大きく長い溜め息をつく。

このまま、給湯室から出て回れ右して元の部署「広報部」へ戻りたいと、紗世は思う。

感傷に浸る紗世だったが、「麻生紗世さん」細い声が紗世の上に降ってきた。

「驚かせてすまなかったな」

目を白黒させ、動揺する紗世。

「この結城由樹がみっちり仕事を叩きこんでやる、宜しくな」

結城は薄く笑みを浮かべ、不安そうにしている紗世の頭を、軽くポンと撫でた。

そして、結城は細く長い指を上着のポケットに入れ、中から何かを取り出し、紗世の手をそっと取る。

掌を上向きに広げて、その上に数個何かを乗せる。

紗世は小さなハートの絵が描かれた包みを見つめ、首を傾げる。

――キャンディ!?

紗世が不思議そうに結城を見上げる。


「1粒で100メートル走れるブリッコのキャラメル」