「余計なことを」

結城は納得したように呟く。

「それで、逃げなかったのか……恐かっただろ」

「えっ、驚かないんですか?」

「何で? 別に隠してたわけではないし、話しても話さなくても、体が弱いことに変わりはないからな」

「そこですか? ずれてないですか~」

「ただ、話す必要性を感じなかった……それだけだ。話しても理解できないだろうし」

「何故、そう思うんですか?」

「何故 ……できることもしてはいけないし、簡単にできることができない。
自分自身が納得も理解もできないことを他人に、理解してもらおうとは思えないから」

――めちゃくちゃ苛められたんだ

紗世の頭に、結城の憂いを帯びた顔が浮かぶ。

「すまない……休んでいいか? 限界だ。明日は6時起きだし」