「結城、プロックはできたんだろ?」

「ですけど……」

「由樹、相手もバカじゃない。ブロックに気付けば、次を仕掛けてくる。仕掛けてきたら、証拠を押さえるんだ」

編集長が結城の肩に手を置き、「わかったな」と目で訴える。

「……はい」

結城は本意ではないと言うように、溜め息1つ呟く。

結城は、侵入ブロック操作を渋々終え、パソコンをシャットダウンする。

部員たちは、パソコンをそれぞれ元の位置に戻し、乱れた室を片付け終える。

窓の外は既に闇に沈み、下弦の月が浮かんで見える。

――あのまま、先に進めば……誰に行き着いたのか

結城は考えながら、自分の席に体を沈める。

溜め息を深くつく。

結城は納得できないまま、中途半端なまま「浅田杏子」で止まったままの結果に、苛立ち舌打ちする。

「由樹、万萬詩悠の起用は時期を早めよう。沢山江梨子の最終回を待たずに、彼を出そう」