「許されたんですか~? そんな軟弱な理由が……」

「……カラータイマーが赤色点滅する前だったんだ」

結城は長い睫毛を臥せがちにし、寂しげな表情を作ってみせる。

――色っぽい

紗世は結城の憂いを帯びた表情に、クラクラしながら、そうだったんだと納得する。

「からかうのはよしなさい、由樹」

黒田が結城に、眼鏡の奥で鋭い視線を浴びせる。

「ウソなんですか!?」

「肩凝りで体調崩したのは本当だから」

「弱わっ……」

紗世が黒田と相田に睨まれたのは、言う間でもない。

結城は真顔でパソコン画面を見つめ、侵入元を探っている。

梅川から聞いた名に、引っ掛かりを感じていた。


――アン
思い当たる漢字はある。だが……。
そんなスキルを持っているとは到底、思えない