「ハッカー侵入が杞憂ならいいんですが……」

ハッカーという単語に空気が凍りつく。

結城がアルファベットと数字のスクロールを目で追いながら、2時間が過ぎる。

窓の外は薄暗くなっている。

「あっ……」

「どうした?」

「やはり、侵入の行跡が……侵入元を調べてみます」

「できるのか、結城!?」

結城は悪戯っぽく、口角を上げる。

「俺、学生時代マツケントッシュでハッカー対策のバイトしてたんです」

然り気無く、さらり口にする。

「コード名ツバクロって言えば結構、名が通ってたんだけど……バイト代破格値で、割りがいいし体力いらなくて……」

「何で止めたんですか?」

紗世が不思議そうに言う。

「肩凝りがひどくなるのが難点だったから」

結城は呆気ない理由を恥ずかしげもなく、堂々と述べる。