「……バカか、いつの時代のヒーローだ」

結城は肩で息をついている。

「知らないんですか? 粒羅名瞳(つぶらなひとみ)特撮社のセルトラマン」

「カード1枚でヒーローが変身する時代だ。あからさまにカラータイマーでピンチがわかるようなヒーローなんて ……ナンセンスだ」

結城が紗世を見つめ、声を出し笑う。

「霞を食べて、熱があるのに何でもない風をして ……平然と無理をしてるよりマシです」

結城が紗世の頭に軽く手を乗せる。

「せめて…… カラータイマーが赤になる前に知らせてください」

「…… バカ。編集部に戻ったら、ひと仕事しなきゃならない。泣いてる暇なんてないからな」

結城の指が、紗世の頬を優しく滑る。

「泣き虫だな ……お前は」

結城は言いながら手の甲で、口元を覆い2つ続けて咳をした。