結城の手は熱い。

ハッとし、頭に浮かんだ単語を否定する。

「素晴らしい。グレイトだよ、結城くん。鶴梨和哉が見えるようだ」

「先生ご自身の書かれた原稿をタイピングさせていただいたんですよ」

「その汚い字では鶴梨和哉は浮かんでこない」

「ご謙遜を、俺はタイピングしながら大いに興奮しました。役得ですね」

「結城くん。君には毎回、創作意欲を掻き立てられるんだよ」

「光栄です。先生……社に戻りまして今一度、文章チェックさせていただきますので、手書き原稿をお預りしてまいります」

「ふむ、君を帰すのは惜しいが仕方あるまい」

「先生……」

結城はすくっと立ち上がり、梅川の側に歩み寄る。

「俺は先生のハードボイルド楽しみですから、首にされない限りは伺います」

梅川の耳元で、囁く。