紗世は瞬きし、内容を確かめ、渡部にメールを打つ。

紗世が再びパソコン画面に目を移すと、結城のメッセージは消されていた。

紗世は編集部は大騒ぎだろうと思う。

梅川の原稿を打ち始めて約1時間半。
結城は紗世に、プリンターをセットさせる。

「先生。アウトプットしますので、ご確認を」

プリントアウトされたA4用紙は、18ページにも及ぶ。

紗世は原稿用紙の汚文字と打ち出されたA4用紙を、交互にマジマジと見つめる。

――この汚文字が……これ!?

紗世は、印刷された文字の源が、原稿用紙の汚文字の羅列とは思えない。

黒田から聞いた結城の噂が、脳裡に浮かぶ。

――ゴースト

紗世はA4用紙をかき集め揃えて、梅川に手渡す。

ひきつった紗世の顔。

「おい、幽霊でも見てるような顔だな」

紗世の手をそっと握る。