梅川は真っ直ぐに自分を捕らえて離さない結城の目から、顔を背ける。

「君は霞を食って生きているような容姿に似合わず、なかなかに良い目をする」

「先生のハードボイルドは臨場感がありますからね。この鶴梨和哉は普段、昼行灯のようですが、スイッチが入ると野獣のように鋭い……惚れ惚れします」

―結城……さん!?

紗世は結城が「万萬詩悠」の話題を、あっさり交わしつつ、情報の出所を上手く聞き出したことに驚く。

一瞬、見せた険しい瞳。

高速で動く結城の指。

「麻生」

紗世はふいに呼ばれて、パソコン画面を見る。

――編集長にメールを

「万萬起用が文藝夏冬社にバレている」
時期をずらせ
情報源は帰社し結城が、直接話す。
編集部内、盗聴器を探せ。
パソコンはハッキングの恐れがある――