「……無理はしていない」

頼りないほど細い声に咳が被さる。

「ウソ、ふらついてるじゃないですか。辛いときくらい頼ってくれたって」

「お前を!? 半人前の仕事もできない奴を俺が頼る?」

「結城……さん」

「冗談だろう? 頼ってくださいなんて、1人前に仕事ができるようになってから言え」

紗世を見下ろし見つめる目が、凍てついたように冷たい。

結城が息をつくたび、結城の喉奥から喘鳴がする。

隙間風のように。

結城は鉛のような体を前に前に押し出す。

紗世はエレベーターの中、壁に凭れかかり、体を支える結城を不安そうに見上げた。

結城は駐車場で鞄を、車の後部座席に、無造作に置くと紗世に1言。

「運転して」と鍵を差し出す。

「心中したくないだろ!?」

熱で潤んだ焦点の定まらない瞳。