パソコンで丁寧に書かれ紐で綴じ、概要まで添えた原稿。

紗世はパラパラとページを繰る。

ところどころに、疑問点を書き記した付箋を貼り付けている。

横滑りの草書体が、万萬の見た目の若さと噛み合わない。

紗世は数ページ目で追って、今すぐ読み始めたいのを我慢し、席に着く。

万萬の原稿をファイルに挟み机に置き、手帳を取り出す。

タイムスケジュールを確認し、午後からの出先への準備をしていると、結城が疲れた様子で扉を開け、倒れこむように席に着いた。

「結城さん!?」

結城は返事もせずに、机に突っ伏す。

紗世が結城の髪を掻き上げ、額に手を当てる。

「気持ちいい……冷たくて」

結城の手が紗世の手をギュッと掴む。

「気持ちいいって、熱があるじゃないですか!?」


「すまない……鞄に冷却シート入れてるから、額に貼って」

ぐったりしたまま、頼りなく呟く。