紗世は大きな目を更に大きくし、弾んだ声で言う。

「その代わり、ちゃんと批評を提出すること」

「えーーっ!? そんな~」

紗世はぷくり頬を膨らませる。

「そんな顔してもダメ、批評も大事な仕事だ」

「編集長もちゃんと読んで批評してくださいよ~」

編集長はアハハと笑ったが、黒田がピリピリした空気を纏い割り込んだ。

「当たり前でしょ。万萬詩悠は大事な逸材なのよ。あなた1人に任せるわけないでしょ」

「……ですよね」

紗世は黒田のヒステリックな声に、へらっと笑顔を作る。

「あなたね、ちゃんと理解してるの? 万萬詩悠を起用する意義!」

紗世はあんぐり口を開け、黒田のつり上がった目を見つめる。

「まあまあ、芽以沙。その辺りは、由樹がしっかり説明するだろうから」

渡部は穏やかに、2人を纏め万萬の原稿を紗世に手渡す。