「キャアーーッ 由樹?」


「由樹!! おい!?」


「あなた、何てことしてくれるの? 由樹の顔に傷でもついたらどうするのよ」

紗世は目の前で倒れているイケメンと、騒ぎ立てる面々を見つめて、何が起きたのかを認識する。

「あの……たかが鼻血で倒れただけでしょう? そんなに騒がなくても……」

「たかが鼻血ですって!?」

言いかけた紗世の言葉を奪うように遮って、ショートボブで眼鏡をかけた女性が、紗世を睨みつける。

「まあまあ。君、えーと……麻生紗世くん? 悪いがおしぼりを給湯室から持ってきて」

「……はい」

紗世は渋々、給湯室に向かう。

とんだ部署に配属されてしまったと凹む。

紗世が給湯室から、おしぼりを持って出てくると、イケメンは革製のソファーに寝かされている。