「これ見てよ」

田辺は工藤に、くしゃくしゃのチラシを差し出した。

『ある人の代わりに、代理でビルから飛び降りてください。お金は、はずみます』

ワープロの文字で、その文言と、個人携帯の番号が書いてある。

「こんなのどこで拾ったんだよ?」

田辺が、首を振る。

「誰かから、貰ったのか?」

「うん、工藤、里見さんって覚えてる?」

工藤は、記憶の端を手繰り寄せて、太った50代の釣り上がった目の男を思い出す。

「ハゲた釣り目の?」

「そうそう、その人。俺っちの友達だった里見さん」

そういえば、里見の事を少し前までは見かけていたのに、ここ数日は、姿を見ていないことに気づく。