工藤のジャンパーから、札束を回収し、慣れた手つきで、黒いビニール袋に工藤の遺体を詰めると、白い仮面をようやく外して、里見は、汗を拭った。

「ハイリスクにハイリターンなんて存在しないんだよ。お前らみたいな奴らにはな」

工藤は、銀行勤めをしていたとかで、人の顔を覚えることが得意だった。警戒心も強く、里見は、工藤が、田辺と浜田以外に話をしているのを、見たことがなかった。

一か八かだったが、無事、依頼者に新しい名前と戸籍を、提供できる。

里見の仕事は、至ってシンプルで合理的だ。

様々な事情から罪を犯し、犯罪者と呼ばれている者達の逃亡を支援し、身柄を保護している闇に包まれた団体組織がある。ホームレスという、この世から消えても誰も気づかない存在を消して、犯罪者達に、新しい顔と戸籍を提供する代わりに金を手に入れるのが里見の仕事だ。