それから、3日後の夏の終わりに、田辺は、住処にしていた公園から居なくなった。

姿を消してから、暫くは、田辺が、大金を見せびらかせに、また自分の元に現れると思っていたが、公園内のコスモスが、咲き終わっても田辺は、戻ってこなかった。

「……やっぱ、ヤバい仕事だったんじゃねぇのかよ……」

季節は11月だ。肌寒くなり、田辺が、段ボールの住処に残していった、くたびれたジャンパーを羽織って、拾ってきたタバコを蒸しながら、工藤は、曇天の空を眺めていた。

「久しぶり」

聞き覚えのある声に振り返れば、質の良さそうなスーツを身に纏い、上品なネクタイを締め、ピカピカの革靴を履いた、田辺が立っていた。

「田辺?……嘘だろっ!別人みたいじゃねぇか」

工藤が、思わず駆け寄ると、田辺が、すぐに後退りした。

「あ、わりぃ、臭うよな」

「いや、こっちこそ久しぶりに会ったのに、
失礼だよね」

田辺が、ニッと笑えば、犬歯の銀歯が光る。

「いや、それより、例の話聞かせてくれよ」

「あぁ、それを伝えにやって来たんだ」

田辺が、しゃがみ込むのを見て、工藤も少しだけ距離をとってしゃがむ。

田辺のボサボサだった長髪は、短く切り揃えられており、ワックスで整えられている。