「銀行の投資信託の営業だよ、金持ち相手に、いかにメリットの方が、デカいか言葉巧みに誘導して、ハイリスクハイリターンの投資信託を販売して、とにかく銀行に金預けてもらう事に、躍起になってた頃もあったな」

毎日、スーツにネクタイをぶら下げて、得意先周りをしていたのが懐かしい。順調だった営業成績も、不況でうまく成績が伸びなくなって、生活の質は低下していった。工藤は、やがて銀行の金に手を出した。

横領がバレて、解雇されたのは、今から丁度、半年前になる。 

貯金は、3ヶ月で消えた。

前職を辞めた理由をごまかして、再就職を目指したが、世の中そんなに甘くない。15年間の銀行の仕事で得られたモノなんて、人の顔を覚えるのが得意になった位だ。

「報酬はいくら貰える?」 

田辺は、片手を上げると、厭らしく笑った。

(500万か、悪くない)

工藤も唇を持ちあげた。