「そう、命綱は、動画に映らない程度に細いモノで、片足にだけ装着して、バンジージャンプするんだ」

「……成程、細いって事は、強度を極限まで落としてある命綱か……ハイリスクハイリターンだな。万が一、命綱が切れて失敗したら、死ぬってことか。ただ、成功すれば、対価として金が貰えるってワケだな。金の出所は?」 

自殺に見せかけて、姿を隠さなきゃならない依頼者とよばれる様な人間が、とても大金を払えるとは思えない。払える金がないなら、本来リスクがあっても、依頼者自身が、飛び降りるのが筋だ。

「工藤は、さすがだね。そう、何かしらの事情でこの世から、おさらばしなきゃならない依頼者を、裏で支援してる、支援者って奴が、いるらしい。依頼者を、死んだことに見せかけるために……。こんな怪しげな事が、行われてる事を俺っち達に知られるリスクを承知の上で、さらには金を渡してでも、飛び降りる映像を撮影したい支援者と、命を落とすリスクがあっても、金が欲しい俺っち達は、利害が一致してるんだよ」

「成程ね」

「工藤は、頭の回転速いよなぁ。俺っち、3回は、里見さんに聞いたのに。なぁ、前、勤めてたの何処だっけ?」

ふいに聞かれた質問に、工藤は目を丸くした。勤めを聞かれたのは久しぶりだ。