もはや、何の夢も希望もない、無職の工藤竜也(くどうたつや)は、よれよれのTシャツに破れかけたズボン、穴の開きそうな靴を引き摺りながら、ぼんやりと、いつもの大通りを住処(すみか)に向かって歩いていた。

空を見上げれば、嫌味な程の青空が広がっている。ふいに、風に乗ってとばされてきた、ビニール袋が、頭上から地面に向かって落ちてくる。工藤は、その汚れたビニール袋を拾い上げると、同じく拾ってきた、食べかけのあんぱんを入れた。

「もっと、まともなモン落ちてこねぇのかよ……」

通りすがりの名も知らない人間が、工藤を見るたびに、距離をとって、すれ違う。

(ちっ……ゴミでも見るような目しやがって)

汚れた、一張羅のTシャツは、何の汚れか分からないほどに黄ばみ、悪臭を放っている。

「臭せぇな……」

もう長く風呂に入ってないのだから当然か。

工藤が、ホームレスと呼ばれる種類に分類されてから、3ヶ月が経っていた。