新入生交流試合、か。成程。

「そういえばそんなものもあったな」

 各寮の中で、成績上位五名の新入生が選ばれ、試合を行うのだ。
 火水土風、どの寮の新入生が有望な騎士候補生かを見るために、先輩方もこぞって見物に来ていた覚えがある。
 対戦カードは同じ寮同士になることもあれば、違う寮同士になることもある。少なくとも選ばれた上位五名の生徒は、どこかしらで誰かと戦うことになるのだが――。

「試合は別に受けても構わないが、対戦カードに生徒の希望は通るのか?」

 クロードの時は、全新入生の中でもドベの成績で入学したために、新入生交流試合に出ることはなかった。故に殆ど記憶になかった。
 すると、アグアトリッジはフン、と鼻を鳴らした。

「通る。名指しで決闘という名の試合を申し込み、教員に名乗り出ればな」
「そうなのか……」

 試合は生徒の希望がある程度通ると。
 挑まれた側がそいつと戦いたくなかったのならいい迷惑だろうな、と半眼になるが、まあそういうことはあまりないのだろう。

 水の寮の生徒及び水の騎士には冷静沈着かつ慎重なものが多いとされるが、その新入生でさえいきなり式当日から喧嘩を売ってくるのだ。アカデミーの成績優秀者が基本的に血の気が多いということは、誰が見ても明白であろう。
 騎士として正々堂々と戦いを挑まれれば受けるべし、という精神が根付いているのだろう。

 全くもって要らん不文律だ。非常に非合理的だ――と私は、ジークレインに所構わず挑みまくっていたかつての自分を全否定するようなことを考える。

「なら、別に構わない」

 別に本意ではないが、私は水の新入生の第一位。断ろうとなんだろうと結局交流試合に出なければならないことは変わらない。

「フン、随分と余裕だな? 次席様」
「そう見えるか」
「お前みたいな魔法の使えない落ちこぼれに、俺が劣るはずがないということを証明してやる。首を洗って待ってるんだな!」
「わかったわかった」

 まさに血の気の多いライバル発言を、私は軽くいなす。
 鬱陶しいが、まあ、相手は子どもだしな。ジークレインに挑んでは負けまくっていた自分のことを思い出して少々痒いが、子どもの言葉を受け流すことなどわけはない――フェルミナへの暴言は除くけれども。

「……おい、アグアトリッジ、悪いことは言わない。こいつに挑むのはやめておけ」

 すると何故かジークレインが、突如アグアトリッジを睨みつけてそう言った。

「はあ? いきなりなんだよ、ジークレイン・イグニス」
「リヴィエールに喧嘩を売るのはお勧めしない。そもそも、水の新入生の第二位であることに不満を持っているなんて言いに来るお前じゃこいつには勝てない」
「意味がわからないな。魔法の使えない落ちこぼれ女を庇ってるつもりか? 平民に落ちこぼれとは、主席様はさすが交友関係が華々しいよなあ」