「はあ?」


何を言っているのだこの男は。
お前とフェルミナを同列に扱うわけがないだろうが。

いくらかつての親友とはいえ野郎と、初恋の少女では対応に差が出るのは当然ではないか……とは勿論言わないし言えないが、

「初対面から上から目線だったやつに好感なんて持てるか。天才だかなんだか知らんが偉そうなんだお前は」
「なっ……おま」
「礼儀を知らんやつに礼儀を尽くす道理はない」

私がフン、と鼻を鳴らして顔を背けると、ジークレインは怒りのためかワナワナと小刻みに震えて叫ぶ。

「それ、お前が言うか!? お前だって十分失礼だろ、初対面の時といい、入試の時といい、今といい!」
「違う。私はお前の態度を見て、相応の対応をしているだけだ」

意図的に冷ややかに言い切り、紅茶を口に含む。反駁の言葉が見つからずに唸っているジークレインを一瞥し、溜飲を下ろす。

ふふ、なかなかにいい気分だ。
十一歳の子ども相手に大人気ないなどという思考は早々に放棄し、私は澄ました顔を取り繕いつつも内心で笑みを零す。
かつてクロードであった時には味わえなかった愉悦だ。ジークレインを言い負かすことなど、長いことライバルをやっていたが、そうできたことはなかったからな。

「ふふ、二人とも仲が良いのね」

フェルミナが嬉しそうに目を細めて笑う。
冗談抜きでとんでもないことである。

「「よくない……あ」」
「ほら、息ぴったり」

ますます楽しそうなフェルミナ。

彼女はやはり大層可愛らしいが、今のこいつと仲がいいなど冗談じゃない。
すぐに訂正を求めようとした、その時だった。


「オイ、そこにいたのか、クローディア・リヴィエール。探したぞ」