『合格
右の者のロイヤルナイツアカデミー入学を、学長アレイスター・スケアクロウの名の下に許可する。

クローディア・リヴィエール』


名の横には金のインクで席次が記されている。
私はその数字を見て、僅かに眉を寄せた。

「第、二席……」
「えっ、ええええっ!?」

通知書の合格の二文字を見て、唖然と固まっていた姉が、呟きを拾ったのか慌てたように名前の横を見て「まああっ」と声を上げる。

「すごいわロディ、次席合格だなんて……! 姉様もギリギリ第十席だったのよ!」
「あ、ありがとう姉上」

しかしまあ、なんと言えばいいのかわからないな。
姉の抱擁を受けつつ、内心で溜息をつく。
姉の喜ぶ顔が見られたことはよかったが、私が狙っていたのは主席の座だった、
それに。


「――ふん。庶子の貴様がまさか、次席とはな。
だが、それだけだ。卑しい血を継ぐ者とはいえ、リヴィエール家の人間としての最低限を果たしたのみだ」


……兄は、主席でアカデミーに合格している。

「兄様、そのような言い方は……。ロディが素晴らしい成績で合格したというのに。あれ程水魔法が苦手だったこの子が」
「できることが当たり前のことをできるようになったからと言って、何を認めろと?
しかも、これ(・・)は水魔法を使って合格したわけではない」

私は黙ったまま、しかしたしかに驚きに目を見開いた。
何故、兄上は私が水魔法を使っていないことを知っている?

「魔法をほぼ使わず、剣のみでディクソン家の火魔法を退けたそうだな」
「……っ」

まずい。
これは兄に不審な行動を見つけられたということだ。思わず身構える。
試験官が部下か何かだったのか? いや、一級騎士のあのマントは、土の騎士隊のものであったはず。兄は水の聖騎士だ、他隊の騎士と懇意にしているということは恐らくないはずだ。
ならば見物人か何かの中に知り合いがいたのか? 
なんにせよ芳しくない状況だ――。

「……、まあいい」

だが。
兄は鼻を鳴らすと、合格通知を無造作に床にひらりと落とした。
そして、冷ややかな目でこちらを見た。

「どうせ幸運の産物だ。すぐにボロを出す」
「……そうならないよう、精進します」

頭を下げ、目を伏せる。


――考えるべきことは多くあるが、なんにせよ、ようやくだ。
これから、二度目のロイヤルナイツアカデミーでの生活が始まる。