「持ち時間を待たずに失格になったのだ。リヴィエールの者として自覚が足りないとしか言いようがない」


冷ややかな兄の声に、ハッと我に返る。

少しばかりぼんやりしてしまっていたようだ――それもこれも師匠の行方がその後掴めなかったからだ。
内心、短く舌打ちをする。

あの人は、一体どういう目的でここに来たのだろう。
王国最強と謳われたあの人が――わざわざアカデミーの入試を見に来た理由は?

(私が知らなかっただけで、『前回』も入試を見に来ていたのか?)


となると、今回の私――『クローディア』も、ツェーデル・ド・アルフィリアの弟子だったのだろうか?


「大口を叩いた割には無様な結果だったな、クローディア」
「兄様……」

兄の蒼い瞳には、いつもの通り何の感情も浮かんでいない。姉が苦々しい顔で窘める素振りを見せるものの、響いていないのは明らかだ。

だがまあ、嫌味を言われることはわかっていた。
むしろ、いつもの通りの兄で落ち着くほどである。

「わかっております。今回、失格となって実技試験を終わらせてしまったのは私の油断から。返す言葉はありません」
「ふん」
「ロディ……」

姉は気づかわしげな表情で、しかし、何かを堪えるようにして通知書を手に取る。


「じゃあ、開けるわね」


姉が緊張した面持ちのまま、ペーパーナイフで封を切る。
そして中に入った紙を取り出すと、裏返したまま書斎の檜の執務机に置いた。兄は無表情で紙を取り上げ、躊躇なく表に返し、一度瞬きをした。

瞬間――兄の眉が、寄る。
無表情を貫く兄の、珍しい表情だった。

兄はしかし、何も言わないまま、その紙を姉に渡す。

「兄様……?」
「姉上、見せていただけますか」

戦々恐々とした様子で呟く姉を急かし、渡された通知の紙を見る。

そして、そこには、