力任せに振り払い、ジークレインを冷たく見返す。
……実際は、くどいも何もない大正解なのだが、ここで認めるわけにはいかない。
これ以上悪目立ちして、クローディア・リヴィエールには得体の知れない力がある、などという噂が王の耳に届いたらまずい。
『お前は』
振り払われた手を見下ろしてから、ジークレインはやはり敵愾心に近い対抗心を燃やした目を向けてくる。
『お前は、落ちこぼれだったんじゃなかったのか? ただの演技か? なら、どうして今までそんな振りをしていた? あんな力を隠していたのは何故だ?』
『別に、隠していないだろう。だから試合は、ああなった。……まあ失格にはなったが』
結果的に隠さないことになってしまったのは、完全に予定外だったけれども。
『どこで、そんな力を手に入れた? 落ちこぼれのフリをしていたのはどうしてなんだよ』
『フリじゃない。現に、水魔法は全く使えないからな。私はリヴィエール家の次女にも関わらず、才能が欠片もない』
そこだけは、ガブリエルの言う通りだった。
本来、水魔法の名門リヴィエールの子女であれば、水魔法を扱えることなど幼児でもできること、つまり『歩く』こととほぼ同義なのだ。難易度で勿論差は出るが、簡単な水鉄砲くらいならば三、四歳からできるようになる。
……だが私は、十一になっても水滴をひとつ出すので精一杯だった。
そしてそれは、今でも同じ。
『それを挽回するために剣の腕を磨いた、それだけだ。……天才と持て囃されてきたお前には、私の気持ちはわからないだろうがな』
言葉を失ったイグニスを見て、私はふうと息を吐く。
何とかごまかせたか。剣の腕を磨いたのはあくまでもクロードであった頃の自分であって、今の私の努力はそれに少し上乗せした程度のものだが。
『とはいえ、失格になったのは残念だが、不合格にはならないだろう』
まったくもって本当に残念だ。恨むぞ師匠。
『主席はお前に譲るよ、天才様。じゃあフェルミナ、試験、頑張って』
『ろ、ロディ……』
フェルミナに笑いかけてから、さっさと二人から離れるべく、私は歩き出す。
背中にジークレインの鋭い視線が突き刺さっているのに、気づかないフリをしながら歩き続けた。
……実際は、くどいも何もない大正解なのだが、ここで認めるわけにはいかない。
これ以上悪目立ちして、クローディア・リヴィエールには得体の知れない力がある、などという噂が王の耳に届いたらまずい。
『お前は』
振り払われた手を見下ろしてから、ジークレインはやはり敵愾心に近い対抗心を燃やした目を向けてくる。
『お前は、落ちこぼれだったんじゃなかったのか? ただの演技か? なら、どうして今までそんな振りをしていた? あんな力を隠していたのは何故だ?』
『別に、隠していないだろう。だから試合は、ああなった。……まあ失格にはなったが』
結果的に隠さないことになってしまったのは、完全に予定外だったけれども。
『どこで、そんな力を手に入れた? 落ちこぼれのフリをしていたのはどうしてなんだよ』
『フリじゃない。現に、水魔法は全く使えないからな。私はリヴィエール家の次女にも関わらず、才能が欠片もない』
そこだけは、ガブリエルの言う通りだった。
本来、水魔法の名門リヴィエールの子女であれば、水魔法を扱えることなど幼児でもできること、つまり『歩く』こととほぼ同義なのだ。難易度で勿論差は出るが、簡単な水鉄砲くらいならば三、四歳からできるようになる。
……だが私は、十一になっても水滴をひとつ出すので精一杯だった。
そしてそれは、今でも同じ。
『それを挽回するために剣の腕を磨いた、それだけだ。……天才と持て囃されてきたお前には、私の気持ちはわからないだろうがな』
言葉を失ったイグニスを見て、私はふうと息を吐く。
何とかごまかせたか。剣の腕を磨いたのはあくまでもクロードであった頃の自分であって、今の私の努力はそれに少し上乗せした程度のものだが。
『とはいえ、失格になったのは残念だが、不合格にはならないだろう』
まったくもって本当に残念だ。恨むぞ師匠。
『主席はお前に譲るよ、天才様。じゃあフェルミナ、試験、頑張って』
『ろ、ロディ……』
フェルミナに笑いかけてから、さっさと二人から離れるべく、私は歩き出す。
背中にジークレインの鋭い視線が突き刺さっているのに、気づかないフリをしながら歩き続けた。