「うーん……なんかモンスターと戦ったり剣振り回したり魔法ぶっ放したり、あと魔王倒したりしてたかな。真城さんは?」
「私? 私も似たような事してたよ。魔法で怪我とか毒を治したり、モンスターと戦ったり、魔王倒したり」
「そりゃ奇遇だ。そういえばその魔王、なんか不死鳥みたいなでっかい炎ぶっ放してきてアホみたいに強くなかった?」
「そうそう! 変な構えだったけど、攻撃と防御と魔法を同時に出してきて大変だったよね。私もやられそうになっちゃった」
「ナントカの構えだろ? 俺、あれで全身大火傷したんだよなー。有能な回復術師が味方にいてよかったよ」
「簡単に言ってるけど、あれ治す方も大変だったんだよ? 火傷と裂傷を同時に治さないといけなかったんだから」
「その節は大変お世話になりました」
「いえいえ、どういたしまして」
そこまで言って顔を見合わせると、俺達は互いに吹き出した。
夏休み明けの教室でこの会話をしていたら、一緒に遊んでいたネットゲームか何かの話だと思われるだろう。しかし、残念な事に魔王との戦い云々はほんの数日前に繰り広げられていた出来事。今ではこんな風に冗談混じりで話せているが、マジで何回死ぬかと思ったかわからない。俺もユウナも、それから共に戦った者達も、生き残っているのが奇跡みたいなものなのである。
「……どうやって収集つけんだよ、この話」
俺はもう一度わざとらしく溜め息を吐いて、三文芝居を終わらせた。
どうやっても高校生らしい会話にならないし、会話の内容に周りの人達がドン引いている。この世界で生きる彼らからすれば魔王の恐ろしさはよく知っているだろうし、会話の内容がゲームなどではなく事実なのだと理解できるからだろう。居心地の悪さが先程までの比ではなくなってしまっていた。
「あれ、もうやめるの? ちょっと昔みたいで楽しかったのに」
ユウナが楽しそうにくすくす笑って言った。
どうやら、彼女の方は周囲の気まずさよりも懐かしい会話を楽しむ方が優先されるらしい。俺なんかよりよっぽど肝っ玉が座っている聖女様だ。
「……まあ、そういえばこんなやり取りよくしてたよな」
ふと、二年前の時の事を思い出す。
放課後や教室での休み時間、たまに俺達はこんな意味のないやり取りをしていた。俺はただユウナが暇をつぶしたいだけかと思っていたのだけれど、もしかすると、これもユウナのいう『アピール』だったのかもしれない。
そういえば、ユウナが男子と話す事って滅多になかったっけ……。友達からも『何で聖女様とあんな仲良いんだよ』とヤッカミを受けてたし。
こうして思い返してみれば、俺ほんとに鈍かったんだなぁ。
「で? 今更制服なんか着て何をするつもりなんだよ?」
このまま考え込んでしまうと自分の鈍さに嫌気が指してきてしまうので、とりあえず話を元に戻す。
すると、ユウナは「あ、うん。えっと……」といきなりもじもじと恥ずかしそうにしていた。
さっきのアホな三文芝居はノリノリだったのに、どうして本題に恥ずかしがるんだろうか。女心わからなすぎる。
「ん? 何だ?」
顔を覗き込んで訊いてみると、彼女はちらりと上目でこちらを見て、こんな提案をしたのだった。
「……制服デート、したいなって。ダメ?」
「私? 私も似たような事してたよ。魔法で怪我とか毒を治したり、モンスターと戦ったり、魔王倒したり」
「そりゃ奇遇だ。そういえばその魔王、なんか不死鳥みたいなでっかい炎ぶっ放してきてアホみたいに強くなかった?」
「そうそう! 変な構えだったけど、攻撃と防御と魔法を同時に出してきて大変だったよね。私もやられそうになっちゃった」
「ナントカの構えだろ? 俺、あれで全身大火傷したんだよなー。有能な回復術師が味方にいてよかったよ」
「簡単に言ってるけど、あれ治す方も大変だったんだよ? 火傷と裂傷を同時に治さないといけなかったんだから」
「その節は大変お世話になりました」
「いえいえ、どういたしまして」
そこまで言って顔を見合わせると、俺達は互いに吹き出した。
夏休み明けの教室でこの会話をしていたら、一緒に遊んでいたネットゲームか何かの話だと思われるだろう。しかし、残念な事に魔王との戦い云々はほんの数日前に繰り広げられていた出来事。今ではこんな風に冗談混じりで話せているが、マジで何回死ぬかと思ったかわからない。俺もユウナも、それから共に戦った者達も、生き残っているのが奇跡みたいなものなのである。
「……どうやって収集つけんだよ、この話」
俺はもう一度わざとらしく溜め息を吐いて、三文芝居を終わらせた。
どうやっても高校生らしい会話にならないし、会話の内容に周りの人達がドン引いている。この世界で生きる彼らからすれば魔王の恐ろしさはよく知っているだろうし、会話の内容がゲームなどではなく事実なのだと理解できるからだろう。居心地の悪さが先程までの比ではなくなってしまっていた。
「あれ、もうやめるの? ちょっと昔みたいで楽しかったのに」
ユウナが楽しそうにくすくす笑って言った。
どうやら、彼女の方は周囲の気まずさよりも懐かしい会話を楽しむ方が優先されるらしい。俺なんかよりよっぽど肝っ玉が座っている聖女様だ。
「……まあ、そういえばこんなやり取りよくしてたよな」
ふと、二年前の時の事を思い出す。
放課後や教室での休み時間、たまに俺達はこんな意味のないやり取りをしていた。俺はただユウナが暇をつぶしたいだけかと思っていたのだけれど、もしかすると、これもユウナのいう『アピール』だったのかもしれない。
そういえば、ユウナが男子と話す事って滅多になかったっけ……。友達からも『何で聖女様とあんな仲良いんだよ』とヤッカミを受けてたし。
こうして思い返してみれば、俺ほんとに鈍かったんだなぁ。
「で? 今更制服なんか着て何をするつもりなんだよ?」
このまま考え込んでしまうと自分の鈍さに嫌気が指してきてしまうので、とりあえず話を元に戻す。
すると、ユウナは「あ、うん。えっと……」といきなりもじもじと恥ずかしそうにしていた。
さっきのアホな三文芝居はノリノリだったのに、どうして本題に恥ずかしがるんだろうか。女心わからなすぎる。
「ん? 何だ?」
顔を覗き込んで訊いてみると、彼女はちらりと上目でこちらを見て、こんな提案をしたのだった。
「……制服デート、したいなって。ダメ?」