さてさて、朝からちょっとしたハプニング(?)はあったものの、俺達はそれから町長さんのところへ挨拶へと行った。
もちろん、移住はOK。町長さんは〝勇者〟と〝聖女〟のウェンデル移住を心から喜んでくれていた。
特に手続き等はないのも驚きだったが──日本だったら住民票だなんだと色々めんどくさいイメージだ──それよりも驚いたのは、俺とユウナ、いや、〝勇者〟と〝聖女〟は住民税やら諸々が非課税なのだそうだ。
言われてみれば当たり前なのだが、俺達はもともとこの世界の住人ではなく、他の世界から召喚された身である。というか、法王パウロ三世より『〝勇者〟と〝聖女〟は世界を救った英雄。その様な英雄から税金を取るなど烏滸がましい』『仮に勇者と聖女が移住を求めても課税はするな』というお達しが各領主充てにあったそうだ。曰く、聖王国プラルメスの中で住む限り、俺達は一切課税されないらしい。
──一応、感謝はされてるのかな。
法王の対応を見て、そんな感想を抱く。
異世界から唐突に召喚して魔王と戦わせた挙句、帰れなくさせてしまった事に申し訳なさを感じているのだろうか。或いは、俺達が自棄になって反旗を翻さないよう、兎に角丁重に持て成して角が立たないようにしているのかもしれない。
法王にどんな思惑があるのかはわからないが、税金を特別控除してくれるというのであれば、有り難く享受しよう。日本みたいに安全がある程度担保されているならまだしも、こんな危険だらけな世界で住民税とかいう生きているだけで課金されるサブスクを支払わされるのは御免被りたい。
町長さんとの話はそこで終わった。簡単にまとめると、支出もなく納税義務もないから自由に生活してくれ、ただ、もし町に魔物等が出た場合は討伐に協力して欲しいとの事だった。
もちろん、有事の際には協力させてもらう旨の約束した。俺達にできる事なんてそのくらいしかないし、困った時はお互い様だ。異世界で青春を謳歌するに当たって、こちらからも何かしらの協力を要求してみよう。
町長から移住が認められると、秘書のレジーナさんから町の空き家を案内してもらう事となった。
レジーナさんは赤髪茶眼で、俺達の世界でいう女性用のスーツの様なものを着ていた。如何にも仕事ができそうな大人の女性だ。
「何かご要望はございますか?」
レジーナさんが俺達に家の条件を訊いてきたので、予め考えていた部屋の要求を伝えた。
ちゃんとした石窯などの台所設備、お風呂、部屋がいくつかあって、更にトイレは水洗にしたいので海側が良いと伝えた。
「うーん……さすがにそれだけの条件を兼ね備えた空き家は、町内にはないかもしれませんねぇ」
レジーナさんが難しい顔をしながら、空き家の資料をペラペラと捲っていく。
うーん、やはり全部の条件に当てはまる家はないか。そりゃそうだよな。できるだけ日本にいた頃と同じ環境に近付けようっていう要求だから、文化水準が異なるこの世界で全てを満たすのは難しい。
何から削っていこうかユウナと相談しようかと思っていると、レジーナさんが「あっ」と声を上げた。
もちろん、移住はOK。町長さんは〝勇者〟と〝聖女〟のウェンデル移住を心から喜んでくれていた。
特に手続き等はないのも驚きだったが──日本だったら住民票だなんだと色々めんどくさいイメージだ──それよりも驚いたのは、俺とユウナ、いや、〝勇者〟と〝聖女〟は住民税やら諸々が非課税なのだそうだ。
言われてみれば当たり前なのだが、俺達はもともとこの世界の住人ではなく、他の世界から召喚された身である。というか、法王パウロ三世より『〝勇者〟と〝聖女〟は世界を救った英雄。その様な英雄から税金を取るなど烏滸がましい』『仮に勇者と聖女が移住を求めても課税はするな』というお達しが各領主充てにあったそうだ。曰く、聖王国プラルメスの中で住む限り、俺達は一切課税されないらしい。
──一応、感謝はされてるのかな。
法王の対応を見て、そんな感想を抱く。
異世界から唐突に召喚して魔王と戦わせた挙句、帰れなくさせてしまった事に申し訳なさを感じているのだろうか。或いは、俺達が自棄になって反旗を翻さないよう、兎に角丁重に持て成して角が立たないようにしているのかもしれない。
法王にどんな思惑があるのかはわからないが、税金を特別控除してくれるというのであれば、有り難く享受しよう。日本みたいに安全がある程度担保されているならまだしも、こんな危険だらけな世界で住民税とかいう生きているだけで課金されるサブスクを支払わされるのは御免被りたい。
町長さんとの話はそこで終わった。簡単にまとめると、支出もなく納税義務もないから自由に生活してくれ、ただ、もし町に魔物等が出た場合は討伐に協力して欲しいとの事だった。
もちろん、有事の際には協力させてもらう旨の約束した。俺達にできる事なんてそのくらいしかないし、困った時はお互い様だ。異世界で青春を謳歌するに当たって、こちらからも何かしらの協力を要求してみよう。
町長から移住が認められると、秘書のレジーナさんから町の空き家を案内してもらう事となった。
レジーナさんは赤髪茶眼で、俺達の世界でいう女性用のスーツの様なものを着ていた。如何にも仕事ができそうな大人の女性だ。
「何かご要望はございますか?」
レジーナさんが俺達に家の条件を訊いてきたので、予め考えていた部屋の要求を伝えた。
ちゃんとした石窯などの台所設備、お風呂、部屋がいくつかあって、更にトイレは水洗にしたいので海側が良いと伝えた。
「うーん……さすがにそれだけの条件を兼ね備えた空き家は、町内にはないかもしれませんねぇ」
レジーナさんが難しい顔をしながら、空き家の資料をペラペラと捲っていく。
うーん、やはり全部の条件に当てはまる家はないか。そりゃそうだよな。できるだけ日本にいた頃と同じ環境に近付けようっていう要求だから、文化水準が異なるこの世界で全てを満たすのは難しい。
何から削っていこうかユウナと相談しようかと思っていると、レジーナさんが「あっ」と声を上げた。