しかしあやかし界ではあまり人間界の情勢は報じられないため、最新の情報を知っているかと言われれば、そうでもない。

 人間界の情報サイトを毎日のように眺めている鞍馬の方が詳しい場合があるので、彼の話から初めて知る件も多かった。

 だが、瓢の言っていた行方不明事件については、あやかし界の情報番組でも何度か報じられていた。

 物騒だなと気に留めている程度だったが、あやかし界でも報道されるということは人間界では大変な騒ぎになっているのだろう。

『その件でな……。うちに泊まっとった情報通の客に聞いたんやけど』

「ほう……。公には報道されていない情報か」

『そうなんや。そいつが言うには、人間界とあやかし界をつなぐ()(もん)の警備がちゃんと機能してへんって話なんや』

「鬼門が……?」

 想像していなかった瓢の言葉に、伊吹は思わず声を漏らした。

 通常、あやかしがあやかし界と人間界を行き来する場合、鬼門という場所をくぐり抜ける必要があった。

 鬼門を通るためには、門番による厳格な審査を受けなければならない。

 その際、人間を食らう種族であるあやかしは、人間界の平和のためにほぼすべての者が門前払いされる。

 人間を食らわない種族であるあやかしも、身分証を提示した上で犯罪歴などを事細かく調べられ、人間にとって害のないあやかしだと判断されてやっと鬼門をくぐり抜けられるのだった。

 しかし、そんな鬼門の警備の機能がおろそかになっているとすると。

「もしや、誘拐事件は……」