数少ない半妖の子の種族判断例を伊吹が調べてみたら、『顔が人間親の方に似ているから人間』だとか、『あやかし親の妖力が低いから人間』だとか、目を疑うような理由ばかり。役人がその時の気分次第で裁定しているのではないかとすら思えた。

 さらに、いまだに人間を下等生物だと決めつけている頭の固い役人が多く、人間親がただの人間だと、半妖の子はほぼ確実に人間だと判断されるらしい。

 しかし御朱印をいくつも持つ人間親の場合は話が変わってくる。

 あやかしに認められた高尚な人間だと役人が考えるからか、その子はあやかしだと判断されるケースが多いことが、伊吹の独自調査の結果、判明した。

 さっき凛と共に視聴した恋愛ドラマで、子供の話が出てきた時。

 自分と凛との間にできる子供について想像した伊吹は、つい熱のこもった接吻をしてしまった。

 ――もし鞍馬が乱入してこなければ、俺の抑制が効かなかったかもな。

 思い返して、伊吹は苦笑を浮かべる。

 しかしまだ、自分たちは子を成す段階ではない。半妖の子の事情から、人間の凛があやかし界で子を産むとしたら、御朱印が(そろ)ってからでないと不都合が多すぎるのだ。

 凛にはまだ、半妖に関するあやかし界の事情については話していない。

 少し前は口づけすらためらっていた彼女に、今無理に話す内容ではないだろう。

 それに、話を聞いたら凛がさらなるプレッシャーを感じそうな気がしたというのも、理由のひとつだった。

 風呂から上がると、「あ、ちょうど今瓢から電話が来ているよ」と、国茂に声をかけられた。

「もしもし。伊吹だ」

『おー伊吹! ちょい久しぶりやなー。元気か?』