それでも、あまりに危険だったら途中で収集を諦めてもいいと当初は踏んでいたが。

 凛と幸せな家庭を築くためには、御朱印はやはり必要だった。

 もし自分たちの間に子供ができたら。

 そんなことは遠い未来の話だと自然と考えていたようで、伊吹は当初自分たちが子供をもうけた場合について、思案するのをつい失念していたのだ。

 あやかしと人間との間に生まれた子供は、当然あやかしと人間の血が半々ずつ混ざった個体であるため、俗に言う〝半妖(はんよう)〟という種族になる。

 しかしいまだにそのケースが少ないためか、半妖は正式な種族名として公的機関では認められていなかった。

 半妖の子は、あやかしか人間か、そのどちらかを出生時に判断されるのだ。それも、役人によって適当に。

 伊吹は、愛する子の種族が人間だろうとあやかしだろうと別に構わない。きっと凛だってそうに違いない。

 しかし世間のあやかしたちの大半、特に年配の者たちにとって、種族がなんであるかはその者の価値を決めるためのもっとも重要な事柄と言っても過言ではない。

 もしあやかし界で人間だと判断されたら、子は大変生きづらくなってしまうことは目に見えている。

 実際には体は半妖だから、人肉を好む種であるあやかしに血肉を狙われる恐れはないが、人間というレッテルを貼られただけで、差別や侮蔑をする浅ましい輩はまだたくさん存在するのだ。

 そして、半妖の子があやかしなのか人間なのかの判断基準は、大変客観性に欠けるものだった。