早速皆で食べてみたら、人気店のカステラだというだけあって、確かに驚くほど美味だった。上品かつ濃厚な甘さがあり、生地はとても柔らかく、あまり()まなくても口の中で溶けていく。

 国茂が煎れてくれたばかりのほうじ茶の優しくほろ苦い味わいが、カステラの甘味とも絶妙に合っていた。

「おいしい! 鞍馬くん、ありがとう」

「本当だ、うまいな」

「僕これ何個でもいける~」

「そう? へへ、よかった~」

 絶賛する三人に、鞍馬は嬉しそうに微笑む。

 穏やかで幸せな、伊吹の屋敷でのひととき。

 人間界では誰からも必要とされずに虐げられていた凛にとっては、信じられないほどの幸福な時間だった。

 こんな朗らかな時間がいつまでも続けばいいのに。

 しかし御朱印をもっと集めなければ、この願いが近い将来(かな)わなくなってしまうかもしれない。

 ――伊吹さんと幸せに過ごすためには、頑張るしかないんだわ。

 カステラとお茶を味わいながら決心していると。

「あ、そういえば。鞍馬が勧めてくれたドラマだが、とてもおもしろかったぞ」

 ついさっき最終回を視聴したドラマについて、伊吹が鞍馬に感想を述べる。

「うん! 私もとてもおもしろかったよ。最後がハッピーエンドでよかった~。鞍馬くん、お勧めしてくれてありがとう」

 伊吹と楽しい時間を共有できたのも鞍馬のおかげだ。凛は心からの礼を言う。

 すると、鞍馬は得意げに鼻を膨らませた。

「でしょでしょ!? 人間界のドラマは好きでよく見るんだけど、あれは本当に傑作だったからぜひ見てほしかったんだ! まさか伊吹もハマるとはね~」