居間の中心に置かれたテレビ画面には、人間界で大人気を博し、あやかし界にもファンの多い恋愛ドラマが映し出されていた。

【最終話】というテロップが画面の下部に出ている。

「い、いよいよ最終回ですね」

「ああ。主人公とヒロインが幸せになるといいのだが」

 ふたり掛けの座椅子に夫の()(ぶき)と肩を並べて座っている(りん)は、彼とそんな会話をした後テレビ画面を食い入るように見つめた。

 この作品は動画配信サービスで視聴できるドラマで、伊吹の弟である(くら)()に勧められたものだ。

『好みのタイプは人間の女の子!』と豪語する鞍馬は、(てん)()のあやかしでありながら人間界の文化に多大な興味を示し、凛によく人間の流行を教えてくれる。

 鞍馬に『凛ちゃんも絶対おもしろいって思うよ。ぜひ見てみて!』と言われた当初は、ひとりで視聴するつもりだった。恋愛がメインのドラマだというから、伊吹はあまり興味がないかもしれないなと考えたのだ。

 しかしワンクール十二話もあったし、どうせなら伊吹とドラマの内容について共有しながら視聴したい……と思い直し、ダメ元で伊吹に声をかけた。

 すると意外にも、『へえ。おもしろそうではないか』と伊吹は乗り気だった。

 思い返せば、伊吹の書斎の本棚には恋愛小説がいくつか置かれていた。

 それ以外にも、ミステリー、コメディ、青春、ホラー小説などジャンルは多岐にわたっている。

 普段から物語ならなんでも(たしな)むようにしているからこそ、伊吹は博学多識なのかもしれない。