知る背景が違うだけで、同じ場面がこんなにも違って見えるものなのだ。私を見つけたライオンさんが、私の為に息が上がるほど全力で走ってくれたのだと思うと、今は大切にして貰った感覚で心がムズムズしている。

そういえば、夢の中に入ってからの私はずっと誰かに大切にして貰っている気がする。誰かの心の中心に置いて貰えるのは、私の人生の中で初めての経験かもしれない。こんなに素敵な事は無い。

あの子の夢の中に入れて貰った事によって、私は誰かに想って貰える幸せを与えて貰ったのだ。誰かと繋がる事がこんなにも幸せなのだとしたら、私があの子の事を想う事でも、あの子を同じ様に幸せにする事が出来るのかな。

……同じ気持ちが返せたら良いな。同じ気持ちが伝われば良い。だから早く、あの子に会いたい。この幸せを彼と分かち合いたい。


ガサガサと辺りから生き物の気配を感じても、もう何も怖く無かった。今の私には前へ進む理由しかないのだから、よそ見をする暇なんて無い。ライオンさんに続いてレンガ道を歩き続けると、段々と辺りが拓けてくる。それに伴い空から注がれる太陽の光も増え、明るく周囲を照らし出す。

すると、先の方でぷつりとレンガ道が途切れているのが目に入った。何か大きな壁が通せんぼうするようにレンガ道を遮っている。木々が生い茂っていた時は全然先が見えていなくて分からなかったけれど、拓けてきた事によりそこにある一枚の壁が何なのか、遠くからでも何となく分かった。