「……ふっ」
「?」
「あはははっ!」
「!」
びっくりした。猫さんは急に爆笑し始めた。あのクールな猫さんが、思いっきりお腹を抱えて笑っている。信じられないものを見たと、目をまん丸にする私に、「あーおかしいっ」と、涙を拭いながら猫さんは息を整える。
「君は賢いんだか馬鹿なんだか分かんないね、不思議な人だよ。それならきっともう、僕の出る幕は無い」
「え?」
「さぁ、中に入って。君の思う場所へ繋がるから、この家はそういう場所。君の好きにすると良い」
どういう事だと、言葉の意味を捉えきれない私を、猫さんは次の行動へと促す。彼はさっぱりした顔で私を家の中へ入れると、扉の手前に立っていた。
「猫さんは来ないの?」
「ずっと居るよ、君の傍に」
「そう言って居なくなるくせに……」
家に入ってくれないという事はそういう事だ。私を慰める為だけの綺麗な嘘を付く猫さんは、一体私をいくつの子供だと思っているのだろう。
「いいよ、行ってくる。困った時はまた呼ぶからね」
不貞腐れながらも「行ってきます」と、扉を閉めると、「またね」という猫さんの声が聞こえた。
次に扉を開けた時、そこにはもう猫さんの姿は無く、代わりに赤茶色のレンガ道が森の奥へと続いていた。
私はまた戻ってきた。