ここへ来る前に約束を交わした時、本当の自分を知られて嫌われたくないとあの子は言っていた。嫌わないという私に、あの子は夢の中で自分を見つけるよう提案して、私はそれを彼が私の本心を探り、どこまで自分を探しに来れるのか試す為だと思っていた。でも、本当のあの子を掴む必要があり、掴めば見つけられる、という事は。


「そうか、探すっていうのは姿を探すんじゃなくて、あの子自身がどういう人なのかを知るという事……?」


今まで求められていたのは彼の本体を探すという事ではなく、彼の中身を知る事。彼の人間性を知る為に私は彼の夢の中を彷徨っていたのだとすると納得がいった。心の中を見せてくれているのだから、それを繋ぎ合わせて一つになった時、本当のあの子が見えてくるはずだという事である。

言われてみれば当然の事だった。だってここはあの子の夢、つまり心の中。この世界にある全てがあの子で出来ているのだから、探して回り、体験し、感じる事は全てあの子に繋がる意味のある事だった。


「この森はアイツに近い部分。始めに君がここへ来た時、深い部分から遠ざけて、アイツを知るまで時間が掛かれば良いと思った。そうしたら面倒になって君が諦めると思ったから」

「……」

「でも、それは間違いだった。浅い部分で君の心と繋がって、諦めるどころかより一層近付いてる。そうなるように仕向けられたんだ、アイツは今頃大喜びだよ」

「……なんでそんなに見つけて欲しくないの?」

「……僕はアイツが嫌いだから、アイツを信じられない。見つけた所できっとアイツはまた逃げるよ、君を悲しませる事になる。そんなの無意味でしょ?」

「……」

「それでも、君はきっとアイツを受け入れるんだろうね」

「……うん」