以前訪れた時と変わらない、森を覆う深い靄の中をただひたすらに歩き続ける。そこに道標がある訳でも無いのに黒猫は迷わず進んで行くので、私も安心して着いていく。猫さんは変わらず私を導いてくれた。

一体どこを目指しているのだろう。あの子の元へ辿り着くには夢の奥深くまで潜らなければならないけれど、ここは一番始めに訪れた場所。つまり始めからやり直す事になってしまった訳だ。

今までを参考にすると、きっとここから進む為に必要なものがあるはずなのだ。スワンボートとか、レンガ道とか……でも、なんでレンガ道を外れただけでここへ戻されてしまったんだろう。こんな危険な場所に一瞬で戻されるなんて怖過ぎる。次は気をつけないと……

……危険な場所? あれ? 可笑しい。今居るここは本当に始めの場所で、所謂夢の浅い部分、という捉え方で良いのかな。もしかしたらその考え方から間違っている可能性もある?

だって深く潜る程に危険なのだと猫さんは言っていた。一番浅い場所なのだとしたら、この場所はあまりにも危険過ぎる。だって一人歩きをする事すら不可能な場所なのだから。

ここより深い場所がこれ以上に危険となると、入った瞬間ゲームオーバーくらいの理不尽さが無いといけない事になるよね? そうなると、もはや探すとかそういう話ではなくなってしまうから、それはあの子が望む事じゃないはず……となると、私が来れる危険度ギリギリがこの森という事になる訳で、それが一番浅い場所にあるとは到底思えないのだ。

でも、私は始めにこの森に居た。何かが可笑しい。この森は、この場所は、一体?


「この森は何なの?」


黒猫の背中に問い掛けると、彼は背を向け歩みを止める事無く答える。