……一体、この黒猫さんはどこまで知っているのだろう。私になんでここに居るの? なんて言いながら、ここに至るまでの経緯を猫さんは知っているようだった。
夢の奥深くを目指さないとあの子は居ないのだから、あの子を探す為に私はもっと深い場所へ向かわなければならないのだと、スワンボードで犬さんから教えて貰った。だから深い場所を目指してきた訳だけど、今、猫さんはそれが危険だと警告する。
「もうやめなよ」
真剣に、私が諦めて戻る事を勧めている。
……諦めた方が、良いのだろうか。
猫さんがそこまで言うという事は、本当に私の身に危険が迫る可能性があるのだと思う。実際に今がそうだったのだから、疑いようは無かった。
となると、猫さんの言う戻れなくなるという事は、夢の中から出られなくなるという事? それとも、夢の中で死んでしまったら本当の私も死んでしまうという事? ……どちらにせよ、現実世界の私はおしまいという事になる。それは……怖い。そこまでの覚悟は、正直出来ていない。
……でも。
「……私、ここに来て何が出来たかな」
あの子を探す為に夢に入って、夢の中を猫さんと犬くんに助けられながら探検して、それで?
「安全です、大丈夫です、でもここには居ないけど。そんな部分だけをまわって、探したけど居なかったので帰りますって訳にはいかないよ。私にはそんな事は出来ない」
「自分が犠牲になるかもしれなくても?」
「……うん」