「アイツを探しに行ったんじゃなかったの?」
「探しに行ったらここに来ちゃったんだよ〜」
「一人はダメだって言ったのに」
「一人になっちゃったんだもん……みんな急に居なくなるから。猫さんこそどこに行ってたの……?」
「ずっと居たよ」
「い、居なかったよ! 犬くんしか居なかった!」
「犬で良いでしょ、犬はダメだった?」
「そういう事じゃない! そうじゃないけど……もういいよ、来てくれたから……」
「死んじゃう所だったんだ」ポツリと呟くと急に実感が湧き、なんだかどっと疲れてその場にしゃがみ込んだ。膝の上に重ねた両腕に顔を埋める。身体が重い……疲れた、すごく疲れた。精神的にも、肉体的にも。もう一歩も動きたくないし、考えごともしたくない。こんなの、初めての経験だった。
「……」
するとその時、足元にするりと柔らかくて温かなものが。急な感覚に顔を上げると、私の足元に擦り寄った猫さんが無表情でじっとこちらを見つめていた。
「もうやめたら?」
「……え?」
急に何を?と、聞き返す私を、金の瞳は真っ直ぐにとらえている。私達はじっと見つめ合っていた。
「もうやめなよ。これ以上は君に被害が出る」
「……」
「深くに潜れば潜るほど、アイツの願望が強くなるよ。今度は本当に戻れなくなるかもしれない」