ぎゅっと目を瞑って叫んでいた。それはお腹の中から全てを絞り出す大声だった。何がどうとか分からなくて、怖くて怖くてもうどうにかなりそうだったから。もう頭の中にはそれしかなかった。私にはそれしか無かったから、それに縋った。心から願った、猫さん助けてと!
「……なんでここに居るの?」
「!」
すると、突如聞こえてきた聞き覚えのある声に、恐る恐る目を開ける。そこに至近距離に居たはずの影の少年はすっかり居なくなっていた。代わりに足元に居たのが、
「猫さん……!」
真っ黒で、艶やかな毛並みの綺麗な猫。私が願った黒猫さんの姿が、そこにあった。
「なんでここに来ちゃってるの……」
感動の再会に感極まっている私とは裏腹に、黒猫は大きな溜息を付く。呆れた様子で私を見る猫さんだったけれど、今の私にはそんな事は関係ない。
「猫さん!」
「何?」
「猫さん‼︎」
「何」
「うわーん! 猫さーん‼︎」
ぎゅっと抱きしめたくて手を伸ばすと、するりとその手を躱して猫さんは私をじろりと睨みつけた。そんな塩対応すら猫さん本人なのだと安心する。